野花や草木の散歩道で一句

道端の野花、そして草や木。
どこにでも咲いている道端の可憐なお花。
古の歌から生い立ちを辿り、草木たちの古を思い浮かべながら
草花や木々を眺めてみませんか。
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甘い蜜の味の「忍冬(すいかずら)」
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  蚊の声す 忍冬の花の 散るたびに (蕪村)


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子どもの頃、甘い匂いにさそわれて
道端に絡んでいる「すいかずら」の花をとっては
チューと吸うと、何とも甘い蜜の味。
「忍冬(すいかずら)」の名前もそこからきているとか。
今でもちょっと吸いたくなってしまいます。
花開く忍冬の花


英語でも、“honey suckle(ハニーサックル)”と言われています。


「忍冬(すいかずら)」の別名は「忍冬(にんどう)」
花の容姿からは、想像もつきませんが
この「忍冬(にんどう)」は中国名です。


蔓性で巻きつきながら、夏の茂った緑が冬まで続いたことから
常緑のつる植物が少ない中国では
冬のすいかずらの緑が、目立っていたのかも知れません。


その他に中国では
この白い花が、日がたつと黄色い花に変わっていくことから。
「金銀花(きんぎんか)」とも呼ばれています。


和名は「忍冬(すいかずら)」と名付けられています。
子どもが、甘い花の蜜を吸っていたことから
名づけられたようです。


シェークスピアの「真夏の夜の夢」のなかで
“セイヨウヒルガオの甘きスイカズラを優しく抱くが如くに”という言葉。


同じつる性の植物で
セイヨウヒルガオは、左巻き
スイカズラは、右巻き
両者がからむとしっかり締めつけられると
男女の抱擁をこのように譬えています。

なだれ咲く忍冬の花


「忍冬(すいかずら)」のつるのからみと花は
唐草模様になっています。
法隆寺から出土された見事な瓦は
「忍冬唐草文字瓦」と名付けられています。


また、この花の忍冬酒も美味しいとか。


今週の歌は、
静かに咲いている、「忍冬(すいかずら)」。
周りに集まる蚊のかすかな羽音。


蚊の羽音がかすかに聞こえる中で、静かに散るすいかずらの花。
静寂な時が、蕪村の絵画的な情景描写に表わされています。


 



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


   
   覆い咲く 茂みを覆う すいかずら
 


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| | 16:48 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
白い「ノイバラ」
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  道の辺の 荊(うまら)の末(うれ)に 這(は)ほ豆の


    からまる君を      別れか行かむ (万葉集)


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緑が濃くなった雑木林。
雑木林の前の陽あたりの良い所に
白い「ノイバラ」が咲き出しました。


刺だらけの枝をあちこちに絡ませながら白い5弁の花が咲いています。

小さなノイバの花

「ノイバラ」は、
古来は「荊(うまら)」と言われていました。
「荊(うまら)」というのは、刺の多いものの総称です。
“ウバラ”“イバラ”ともいわれます。


今の季節、芳香を放って咲いているように
万葉の頃も、日当たりのいい道端に咲いていたのでしょう。


万葉集には、「荊(うまら)」の歌は一首だけですが
これ以降の文学作品には
“イバラ”“ウバラ”“ハナイバラ”と出てくるものは
「ノイバラ」をさしています。


「ノイバラ」は、野原に生えるバラ。
名前の通り野原や河岸に、刺のある枝を分岐させながら
繁茂しています。
花は、一つ一つ小さいものです。
咲いた花の芳しい香りは辺り一面に漂います。


今日の歌は、
千葉県君津郡の出身の防人が詠んだ歌です。


道に咲く「ノイバラ」の枝先に巻きつく豆の枝のように
からまるあなたに別れてゆくのかと
出征する朝の、妻との別れを惜しんでいる様子が
ひしひしと伝わってくるようです。


日本に咲く「ノイバラ」は、白花です。


ヨーロッパでは、シューベルトの“野バラ”が知られていますが
これは別種の野バラで、ピンクの花が咲きます。
この野バラは、ヨーロッパ各地で日本以上に親しまれています。


今、バラ園などは大輪の薔薇が咲き誇っています。
そういった園芸種のバラの台木になるのは「ノイバラ」です。
華麗なバラの花を咲かせる原動力ともなっているのです。


子どもの頃、藪に入って遊んでいる時に、
つい、繁茂したノイバラの藪に入ってしまい
スカートは破ける、刺にさされる
怒られたり、痛かったり、踏んだり蹴ったりの
今となっては、懐かしい思い出が
この花を見るたびに、よみがえってきます。


 


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


   
   散歩道 葉影に白き 花いばら 
 


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| 初夏 | 17:07 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
「ゆきのした(虎耳草)」は二枚舌
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  真白くも  小さき蝶の  形して
  
   夏きたるとて   雪のした咲く
(窪田 空穂)


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ちょっと湿った所にはえている「ゆきのした(虎耳草)」
緑の季節が深まった頃に
うっすらと白い毛に包まれた葉の間から花茎が伸びてきます。


花茎がすくすく伸びて、五弁の白い花を咲かせます。
五弁の花は、上部が三弁で短く
下部の二弁は、長く左右に垂れさがります。

舌に見える、ゆきのした

長く垂れさがっている二弁を見ると左右対称ではありません。
山野草の大文字草などは、花弁は左右対称なのに
「ゆきのした(虎耳草)」は、どちらかが長く対称にはなっていません。


この二弁を“舌”に見立てて
「ゆきのした(雪の舌)」という説は、中村浩氏が書かれています。


ただ、この二弁の舌は“二枚舌”につながることから
“二枚舌”は嘘つきということで、
忌み嫌われている処から
「ゆきのした(雪の舌)」と呼ばれなかったのかとも書かれています。


一般的には
牧野富太郎博士の
常緑の葉をつけていることから
雪の降る冬には、雪の下になっても枯れないところから
「ゆきのした(雪の下)」という説になっています。


中国からの渡来の歴史は古く、原産地の中国では
垂れさがった二枚の花弁を虎の耳に見立てて
“虎耳草”と言われていたそうです。


クローン植物といえるもので、種子を作らず
赤く細い茎を長く延ばしていき
その先に子どもを作りながら増えていきます。

若い葉に産毛のように白くなっている葉。
この生の葉のしぼり汁は、子供のひきつけや、やけど、虫さされの
治療に使われていました。
木陰に咲く虎耳草

花が咲き始める頃の若い葉のてんぷらなども美味しいものです。

庭に植えると驚くほど増える「ゆきのした(虎耳草)」

今回の歌は、
春の花が終わり新緑が濃くなる頃に
地面を這うように咲く、
白い「ゆきのした(虎耳草)」を詠っています。

「ゆきのした(虎耳草)」が咲きだすと
夏前の梅雨がやってきます。


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


   
   葉陰より 赤き蔓だし 虎耳草 
 


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| 初夏 | 00:18 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
「きり(桐)」は、最上の色とされる紫の花が咲く
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  桐の花の あまきかをりぞ ただよへる 


   五月の朝の  畑のよろしさ(佐々木信綱)


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五月晴れの中、
大きな木に紫色の花が咲いています。
甘い香りを放って初夏を飾る「きり(桐)」です。

香り漂う桐の花

源氏物語の最初に出てくる“桐壺”
“桐壺”とは、
内裏の庭に桐が植えられていた庭をいい、
淑景舎(しげいしゃ)の別称でもありました。


「きり(桐)」は、日本には自生していません。
中国原産とされ、吉祥の木とされていました。
中国から朝鮮を経て渡来してきたようです。


この「きり(桐)」は、
木理と光沢が美しく
耐湿、耐寒性に優れ
木材は軽くやわらかで狂いが少ないことから
箪笥や長持などの家具材として重要なものとされてきました。


そして「きり(桐)」の花も
最上の色とされる紫であることから
花の美しさと共に
平安の人々にも愛されたのでしょう。


“大和本草”には
『この木切れば長く長ずる、故にきりと云』というように
切ってもすぐ芽が出て成長が早いことから
「きり(桐)」と呼ばれたのだという説があります。


今回の歌は
大きな木に咲く「きり(桐)」の花がさく畑。
花の香りが心地よさそうです。

空まで伸びる桐の花


関東の地では
女の子が生まれると庭に「きり(桐)」を植えました。
成長して嫁ぐ頃になると
大木に生長した木を使って
嫁入り道具の箪笥を作るという風習がありました。


現在は、20数年で大木が育つ庭もありません。
桐箪笥を持つ家庭も少なくなっているようです。


日本の気候には、
大事な着物などの保管には、桐箪笥は最適なのですが…



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


   
  五月雨に  桐のむらさき  花落ちる 
 


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| 初夏 | 00:28 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
ムベ(郁子)なる、不老長寿の実
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  もの恋ふる 心さまねし 夕月夜


  軒端の郁子の 花咲きにほふ (岡 麓)


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緑の葉の中から、
バナナをむきかけたように花が開いています。
小さな薄黄色の「ムベ(郁子)」の花。
ほのかな香りの郁子の花


秋になると卵大の紫色の実をつけます。
甘い味で、不老長寿の実と言われています。


「ムベ(郁子)」は、“アケビ”と似ていますが
それぞれ、“ムベ属”、“アケビ属”になっています。
これらは、アジアに生息しているものです。


「ムベ(郁子)」の名の由来は、
近江国の蒲生野(かもうの)で猟をされた天智天皇が
男子8人を持つ元気な老夫婦に出会った時に、
長命の秘訣をお聞きになりました。
“秋に採れる、霊果を食べている”から答えました。
そして、一つ差し出します。
天智天皇は、霊果を食べて
“ムベなるかな(なるほどもっともである)”と感動され、
この霊果が「ムベ(郁子)」と名付けられたと言われています。
それ以来、近江国から朝廷に献上されるようになりました。


「ムベ(郁子)」の実は、“あけび”より一回りほど小さく
実は、光沢のある紫色をして、裂開しません。


甘い実は、不老長寿の実として
今でも栽培されています。


「ムベ(郁子)」は常緑のつる性低木で
冬でも葉が落ちません。
からみついて咲く郁子の花

葉が出る時期に
幼茎ではは三葉、
その次に五葉、七葉と
掌状の小さな葉が出てくることから
めでたい木ともされています。


今日の歌は、
いろいろと思いめぐらしていて、
気がつくともう夕暮れになってしまった。
軒端の郁子の花の香りが漂ってくると詠っています。


常緑で、あまり高くならないで実をつけることから
近年、野趣味がある庭木として、人気も高まっているようです。


庭に植えて、秋に採れる不老長寿の実を
“ムベなるかな”と食べてみたいと思っています。



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


   
  五月晴れ 葉に揺られ咲く 郁子の花 
 


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| 初夏 | 21:48 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |


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