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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
片岡の この向(むか)つ峰に 椎蒔かば
今年の夏の 蔭に比(そ)へむか(万葉集)
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緑の樹木は、真夏の日差しをやわらげてくれます。
この暑い時期、木陰があるとホッとします。
今回は、可愛い実をつけ始めた「しい(椎)」の木。
暖地に生える常緑の高木です。
神社の境内や、公園によく見られます。
農家の庭などには、大きく育った気が見られます。
初夏のころ穂状の花穂を新枝の葉脈からだして
黄色の雄花がびっしりついて、香りを放ちます。
今の頃、花が咲いていた枝に実がつき始めています。
椎の木の木陰に入って
ちょっと見上げてみてください。
まだまだ青いつぶらな実がみられます。
ぶな科の常緑高木で
スダジイ・ナガジイ・ツブラジイ・マテバシイなどを
総称して「しい(椎)」と呼んでいます。
共に球形の堅果をつけます。
中の実の果肉は、きれいな白色です。
この白い色は、
“歯並びは 椎菱如(な)す”と
応神天皇の歌に出てくるように、
美しい白い歯や
歯並びの形容にも
古代から使われていました。
白色の果肉は、
食用にしていたようです。
枕草子にも
「にげなきもの」の段に
椎の実を摘んでいるとあります。
今回の歌は
ここに椎の木を蒔いても
一年では、夏の木陰を
作るほど成長しないことを
詠っています。
古来では、
椎の木を栽培していたのでしょうか。
実も食料となり、樹皮なども染料として使われていました。
生活に必要な木として植えられていたのです。
近くの里山の椎の木も
古来に栽培されていたかもしれません。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
風吹けば 揺れる青い実 椎若葉
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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ぬばたまの 黒髪変わり 白髪(しらけ)ても
痛き恋には 会う時ありけり(沙弥満誓)
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「ひおうぎ(桧扇)」は、夏の野に咲く
黄赤色の花に、濃赤色の斑点があります。
葉がひろがるさまが、
桧扇のような形をしていることからの名前です。
桧扇は文字通り、桧(ひのき)の薄板を重ねて作られた扇です。
今の扇子の形とは違い、
細長い円形をした薄板を糸で綴り重ねたものです。
花後は、秋に黒い実を結びます。
この黒い実を「ぬばたま」と呼びます。
漆黒のような深い黒色の実で
つややかな光沢も備えています。
この、光沢のある黒い実が万葉人を捉えたのでしょうか
「ぬばたま」の「ぬば(野羽)」は
黒色を表す語として使われていました。
黒を意味する言葉の
“黒髪” “黒” “闇” “夜” “月” “夢”などの
枕詞に使われています。
黒い実を結ぶことで「からすおうぎ」とも呼ばれています。
歌で詠まれる場合には「ひおうぎ」ではなく
枕詞としての「ぬばたま」が多く使われています。
「ぬばたま」と詠まれている歌は、
万葉集に多く見られ、80首にもなります。
今回の歌は
大伴旅人が、筑紫に赴任していた時に交友があった満誓。
帰郷した旅人に贈った歌です。
黒髪が、白髪となるような老年になっても
心ときめく激しい恋に出会う時があるのだと
この歳になっても改めて感じていますと…
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夏空に 野に咲く桧扇 首もたげ
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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
わすれ草 わが紐に付く 香具山の
故(ふ)りにし里を 忘れむがため(万葉集)
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梅雨時の、草むらに咲く「わすれぐさ」
黄赤色のちょっと暑苦しい花です。
現在の、「やぶかんぞう」です。
かんぞうは、中国名の「萓草」をそのまま呼んだ名前です。
「萓草」は中国の古代の民族思想では、
「この草を身につけていると、憂いを忘れる」という思想がありました。
そして、この思想が万葉の頃には
日本にも伝わっていたようです。
この「わすれくさ」は
乾かした根を煎じて飲むとデキモノが治る。
花を煎じて飲めば、興奮剤の効能がある。
そんな効能から
苦しみを忘れる草という事で、「わすれくさ」といわれたようです。
春の若芽は食用ともなり、山菜の一つとして摘み草もされていました。
現在では、道端に咲いている「わすれくさ」の効能などは
わすれられているようです。
今回の万葉の歌は、
太宰師(そつ)のころの
大伴旅人が詠んだ歌です。
「わすれくさ」の花を身につけておくと、
物を忘れるというので
「わすれくさ」の花を、
着物の紐の先に結んでおいた。
それは、香具山の麓にある
私の故郷が、忘れらないから結んでおいた。
効いてくれればいいのにな…と
詠っています。
年をとると、
「わすれくさ」の効力を借りなくても忘れる事が多くなります。
ちょっと寂しいですね。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
野の隅に 萓草のはな 首もたげ
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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
打つ田には 稗(ひえ)は数多(あまた)に ありといえど
択(え)らしわれそ 夜(よ)をひとり寝(ぬ)る(万葉集)
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梅雨時の、雨上がり。
道端では、草いきれするほどに、草丈が日毎に高くなってます。
ここのところグングン伸びているのが
「野稗(のびえ)」別名「いぬびえ」ともいわれています。
古来から「稗(ひえ)」と呼ばれているものは
田や畑で栽培されていたものです。
中国原産の「稗(ひえ)」は、五穀の一つ。
頑強な植物で、荒れ地でもよく育ちます。
稲のように、天候に左右されることなく
不作の少ない穀物であったために、山深い所などでは常食となってました。
飯として、おかゆとして食べられていました。
そして「稗酒」なども作っていたようです。
宮崎県の「稗搗節(ひえつきぶし)」の歌詞に
「なんぼ搗いても この稗むけぬ どこのお蔵の下積みか」
と唄われているように、稗を搗くには大変だったようです。
稗を常食にしていた人達の山村暮らしを唄っています。
稗の味は、米と比べられないくらい不味いものです。
栽培状況が良くなるにつれ、食料としてではなく
救荒作物として栽培され、茎・葉と共に飼料として使われてきました。
近年は、食べ物のアレルギー問題や栄養管理の面から注目されてきています。
五穀米、十穀米などに商品化され、
米と共に炊きあげて食べられています。
ここに本文を記入してください。
この歌で詠まれている「稗(ひえ)」は
穀物として栽培されていた「稗(ひえ)」ではなく
稲の中から、抜きだされている「野稗(のびえ)」を詠んだものです。
万葉の頃は、稲が作られている田んぼの中は
「野稗(のびえ)」だけではなく
他の雑草も多く生えていたのでしょう。稲の田んぼの中に、沢山の邪魔ものの「ひえ」が
択り捨てられずにあるのに、
択び出されて捨てられた私は、
夜、寂しく一人寝をしていますと
稲田に生える「野稗(のびえ)」のように扱われていた
農村の女性が詠った歌です。
今では、田んぼの稲の中には雑草などありません。
畔道に生える「野稗(のびえ)」に
万葉ころの稲田を思い描いてみませんか。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
雨上がり そよぐ稗草 露落とし
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