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高円の 野辺の容花(かほばな) おもかげに
見えつつ妹は 忘れかねつも(万葉集)
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雨が降るたびに
散歩をする 足元の雑草の蒼さが 増してきます。
そして、夏の陽を浴びて花を開く
「容花(かほばな)」は「ひるがお」の古名です。
万葉集には
「容花(かほばな)」
「貌花(かほばな)」
「可保波奈(かほばな)」
「可保婆奈(かほばな)」
と詠まれて、植物名が出てきます。
この花の解釈には、
「かきつばた」
「むくげ」
「おもだか」
「あさがお」など
諸説がありましたが、
現在では、
「容花(かほばな)」は
「ひるがお」というのが通説となっています。
「かほばな」と呼ばれた「ひるがお」は、多年生の蔓草です。
茎がほかの植物に絡み、野原や道端を
這うように拡がります。
「ひるがお」は、朝顔に似た小型の淡紅色の花が、昼に開きます。
太陽が高くなる夏の時季に
昼間に漏斗型の花を開き、夕方には閉じる。
もともと、「かほばな」には「美しい花」という意味があります。
野に咲く「ひるがお」は、美しい野の花という意味もあるようです。
万葉の頃、
野の草に絡みついて咲くひるがおは
美しい花として、万葉の人達に眺められてきたのでしょう。
今回の万葉の歌も
高円の野に咲く、容花(かほばな)を眺めていると
目の前に、妻の姿が見えてきて
私は、妻が忘れることができないと詠っています。
現在の「ひるがお」は、
草地を這っていたり、
道端の草やフェンスに蔓を伸ばして咲いています。
愛でる花というより
雑草の仲間になってしまっています。
草地を覆って可愛い花を咲かせていますが
梅雨の後の、大きく伸びる草と共に
草刈りの対象となってしまう場合が多くなっています。
暑くなる毎日ですが、
散歩の足を延ばして
野の花のヒルガオを眺めてみませんか。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
常夏月 ひるがお開き 畑道
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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
知らずとも たずねてしらむ 三島江(みしまえ)に
生(お)ふる三稜(みくり)の すじは絶えじを (源氏物語・玉蔓)
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雨の季節、水辺の植物も鮮やかに育っています。
今回は、池や沼地に生える「みくり(三稜)」、
(三稜草)とも書きます。
漢名は 「黒三稜」
池や沼などに
葦などのと同じように、直立して生えています。
茎は、三つの稜(くり)のある茎を持つ、
三稜形で高さは80センチ位になります。
夏が近づいてくると
葉の間から、茎が伸びてきます。
その上部が、分枝して花穂となってきます。
上部につくのが雄花。
小さな花穂がたくさんでます。
枝の下の方に、ついているのが雌花。
球形をして、
突起が多い緑の集合花球になります。
この形状から、栗のイガに見立てて
「三栗(みくり)」という別名もあります。
雄花と、雌花の花穂のリズム。
いつまで見ていても飽きません。
昔は、この三稜で、
簾(すだれ)なども編んでいたようです。
源氏物語の「玉蔓(たまかずら)」の章に、「みくり(三稜)」が登場します。
源氏の君と一夜を過ごしながら急逝した夕顔。
夕顔には、頭の中将との忘れ形見の姫がいたのです。
夕顔の消息が絶え、行方がわからなくなってしまい、
乳母の夫が、九州の太宰府に下ることになり
当時四歳の姫も、太宰府に連れて行きます。
しかし、乳母の夫が亡くなり、
実の父と姫を会わせようと、乳母は姫と共に帰京します。
その時に、偶然にも夕顔の侍女と乳母が再開します。
夕顔の侍女は、その時には源氏に使えていたため
姫のことを源氏に伝えます。
源氏が、哀れな夕顔の姫君に着物と共に添えた歌です。
姫は知らなくても、摂津の三島に生えている
三稜草のように、同じつる(蔓)によってつながっているのですと。
低湿沖積地の摂津近辺には、三稜が茂っていたのです。
しかし、姫君とっては、源氏は知らない人。
『かずならず 三稜やなんの すじなれば
うきにしもかく 根をとどめけむ 』と返歌します。
ものの数に入らない三稜草のような身分の私は
どういう因縁でこの世に生をうけたのでしょうと返すのです。
浮草ではなく、水底に根を生やしている三稜。
水面からでは見えないけれども沼の底でしっかり根をおろしている。
この世に生を受けていると言ってます。
万葉集には、この三稜は出典してませんが
平安時代には、多く登場しています。
花穂をつけるこの季節、
花穂が乱舞する姿は、他の水草に比べると見応えがあります。
暑くなる季節、涼を呼ぶ池のほとりには、
三稜が茂り、花穂が乱舞しています。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
水の音と 三稜の花穂 賑やかに
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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あしひきの 山菅の根の ねもころに
われはそ恋ふる 君が姿に (万葉集)
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万葉集に詠まれている「ヤマスゲ」
「麦門冬 和名 夜末須気」と、和名抄にあります。
漢方の「麦門冬」です。
これにも2種類あり
「大葉麦門冬」は、ヤブラン、
「小葉麦門冬」は、ジャノヒゲと呼ばれています。
どこにでも自生する常緑の多年草です。
土を這う根には、短い根茎と念珠状に肥厚します。
米粒ほどの念珠状の瘤根を乾かしたものが、漢方の「麦門冬」になります。
鎮咳・解熱・滋養強壮薬として、
主に民間療法として使われていました。
「蛇(ジャ)のひげ」、別名「リュウノヒゲ」と云われています。
古より神社の軒下などに、
よく植えられている「リュウノヒゲ」です。
これは、雨だれよけに植えられていました。
今頃の季節には、神社の境内に入ると
お社の廻りなどに、常緑の中に可愛い花が見られます。
白紫の小さな花が咲く、リュウノヒゲです。
足元の常緑の緑から、可愛い花がたちあがらんばかりで咲いています。
この白紫の花が、秋には青紫の珠になります。
普通の植物はこれが実となりますが、これは実ではないのです。
リュウノヒゲは、種そのものが多肉質なのです。
種がそのまま大きくなったものなのです。
むき出しの種子です。
種子の色も鮮やかですから
冬のリュウノヒゲも見ごたえがあります。
リュウノヒゲは、葉が細くて堅く、常緑を一年中保っているために
今でも、ガーデニングなどの時などには、
カバープランツとして、好まれて使われています。
今回の万葉の歌は
リュウノヒゲの根が、細かく絡むように
わたしもあなたを、恋慕います。
君の姿を、想いながらと
人を慕う気持ちがよく出ている歌です。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
飛び石の 隙間に白き 竜のひげ
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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
昼は咲き 夜は恋ひ宿(ぬ)る 合歓木(ねぶ)の花
花君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ(万葉集)
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今回は、梅雨空に、絹糸の花火がごとく花をつけている
「ネムノキ(合歓の木)」
この木の目覚めは遅い。
他の木が、新緑をつけ始めてもまだ音沙汰ない。
5月、やっと目覚めて新緑に染まっていきます。
そして、あっという間に花をつけていきます。
その花は、細い絹糸が天に向かって
はじけ散る花火のように咲いていきます。
落葉高木のマメ科の植物ですが
マメ科らしからぬ花が咲きます。
夕方暗くなってくると、
上向きに両手を合わせたように閉合することから
この名前が来ています。
漢名は「合歓(ゴウカン)」、
喜びを共にすることで夫婦和合を意味しています。
中国では、縁起の良い木として庭によく植えられています。
別名、「コウカ」「コウカノキ」とも呼ばれています。
農家では、葉をもんだ汁をつけて、ブヨに刺されないようにしたり
若芽や若葉を茹でて食べていたようです。
マメ科ならではのものでしょう。
材質は固いので、下駄の歯にも使われていました。
そんな「ネムノキ(合歓の木)」を詠んだ歌。
大伴家持と長い間、歌を交わしあった紀郎女(キノイラツメ)の贈答歌です。
昼は花が開き、
夜になると、恋したいながら葉が眠る合歓の花を
私ばかりで、見ていていいものなのでしょうか。
お前さんも見なさい…と。
「合歓」の意味あいを持つロマンチックな歌です。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
色淡く 合歓(ねむ)の花開き 夏近し
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