野花や草木の散歩道で一句

道端の野花、そして草や木。
どこにでも咲いている道端の可憐なお花。
古の歌から生い立ちを辿り、草木たちの古を思い浮かべながら
草花や木々を眺めてみませんか。
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衣服を作った、「苧(カラムシ)」
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う



━━━ 万葉の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 むしぶすま 柔(なごや)が下に 臥(ふ)せれども
 
      妹(いも)とし寝ねば  肌し寒しも
(藤原麻呂)   

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散歩道の菊の奥に生えていた「苧(カラムシ)」
カラムシの葉

万葉の頃は「蒸(ムシ)」
別名は苧麻(チョマ)、マオ。
葉の裏が白いので、
「ウラジロ」と呼ぶ地域もあります。


古来から、「苧(カラムシ)」は
植物繊維を採るために
栽培もされてきました。
今では丈夫で畑のしつこい
雑草として嫌われているようです。


衣類を作る繊維として、
なくてはならない植物でした。
このカラムシの茎(カラ)を蒸して
そこから繊維を採っていました。
それゆえ、
「カラムシ」と言われたのでしょう。


茎の皮からは衣類、紙、さらには漁網に
まで利用できる丈夫な靭皮繊維が
作られるため、有用植物でした。


日本書紀によれば、天皇が詔を発して民に栽培を奨励すべき草木の一つとして
「苧(カラムシ)」が上げられています。


中世の越後は、カラムシの最大の産地でした。
そこで、織られた織物は上質のものです。
「越後上布」は手紡ぎ糸を使って織られ、
戦国大名として有名な上杉謙信は、衣類の原料としてこれを貿易に用い、
莫大な利益を上げたと言われています。


越後で織られた「小千谷縮・越後上布」は、
国の重要無形文化財に指定されています。


現在は、福島県会津地方の昭和村で
栽培から糸紡ぎ、そして織りまでを生産をしている、本州唯一の産地です。
その希少性から平成3年に国選定保存技術として認定されています。
毎年7月には、カラムシ祭りが開催されているようです。
昭和村のカラムシ織り、詳しくはこちら

からむしの花


太平洋戦争の時は、野生のカラムシの繊維を集めて
軍部に供出していたそうです。


なくてはならないカラムシでしたが
今では、道端の隅にひっそりとでも強靭に育っています。


万葉集では、「蒸(ムシ)」を詠った歌は一首。


むしぶすまの「ふすま」は夜着や寝具のことです。
カラムシで作った、寝具は高級なものであったようです。
この歌の作者は、藤原不比等の四男、麻呂。
大伴旅人の妹の大友坂上郎女に贈った一首。


貴族に使われていたカラムシの寝具。
カラムシの繊維の寝心地が気になります。

 


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   
   秋雨や 苧(まお)の葉揺らす 裏しろき
   

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| | 18:11 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
平城京と「チカラシバ」

 ━━━ 万葉の歌  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 
立ちかはり 古き都と なりぬれば
 
      道のしばくさ 長く生(お)いにけり 
(万葉集)



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今日の植物は「チカラシバ
「シバ」と呼ばれていますが、
土手などに生える背の高い雑草です。

万葉の頃の「シバ」というのは
今では、野芝と言われるようなものです。
川辺に生えるチカラシバ

明治以降に入ってきた
グランドに生えている芝ではなく
背丈が20センチ位の高い草をさします。
そして、道端に生えている雑草類も「シバ」と呼ばれていたようです。


「芝居」は、猿楽や田楽を観るために
桟敷席と舞台との間の 芝生の中の見物席。
庶民の見物席でした。
それが「芝居」の語源だと言われています。


夏の終わりから秋にかけて土手などに見られる「チカラシバ」は
根が良く張りついて、
容易に引き抜き難いことからついた呼名です。
道草」とも呼ばれます。


草丈は50〜60センチ位まで伸びます。
土手などに生えているとちょっと高い草丈が目立ちます。
穂をつけて伸びる雑草ですから
荒廃を感じさせるのでしょう。


この「チカラシバ」が詠まれている歌も
聖武天皇の時代の、遷都されて残された都
荒れゆく平城京の寂しさを詠っています。


歴史的に見れば
藤原4兄弟が、天然痘で倒れて
藤原氏の勢力が衰えていた時代です。
天平12年9月に、藤原広嗣が北九州(大宰府{だざいふ})で挙兵。
衰えた藤原氏の勢力を回復しようとしたものです。


朝廷は、平定するための兵を九州に送ったのと同じ時期に
伊勢、伊賀、近江に行幸し、
同じ年の12月に、都が平城京から恭仁京(くにきょう)に遷されます。


藤原氏の勢力が衰えて、
次なる勢力闘争いの影響で
次々と遷都を繰りかえしていたのでしょう。


チカラシバ」が覆っている
荒びゆく故郷の都を映しだしています。     

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  しばの穂が 揺れる水面に 影長く
   

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| | 15:35 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
秋風に揺れる「薄(ススキ)」

草原で、秋風に揺れる「薄(ススキ)」
ススキの花穂が、秋の光に映えています。

古事記の八千矛(ヤチホコ)の神とスセリヒメの「合歓の歌」の中で
スセリヒメを「一本薄」になぞられています。
古代から生育するススキです。
ススキとセイタカアワタチソウ 
10数年前には、海を渡ってきた
セイタカアワダチソウに
河原や草原が埋め尽くされてしまうと
マスコミでも騒がれたこともありました。

その時は、秋の河原や草原は
黄色く色づいていました。


年月が経つにつれて、
昔から、我が国に生育していた
ススキのほうが強かったようです。



いつのまにか、秋の高原はススキの穂が揺れる
草原に戻っています。


ススキの間から
セイタカアワダチソウが見え隠れしてはいますが…

このススキは、草葺屋根の材料になり
このススキの別の呼び名、「カヤ」は刈り屋根の意だとも言われています。
その他に
「尾花(オバナ)」とも呼ばれ
万葉集には、ススキ、カヤ、オバナを詠んだ歌があります。

その他に「袖振草」、「乱れ草」とも呼ばれています。

秋の七草の一つのススキです。
十五夜にはススキ活けて、月を愛でます。

この中秋の名月は、風流で月を愛でていたのではなく
農作物の収穫と結びつけられていたようです。

このススキは、魔除けの力があり
農作物が守られるという信仰が中国では今でもあります。
日本にもその信仰とともに伝来してきたのです。

風流に十五夜に月を愛でるようになり、
いつの頃からか、
日本では十三夜も楽しむようになりました。
十三夜の月見は日本独特の風習として今に至っています。

ススキの花

魔除けの力を
持つススキは、
現在でも
使われています。
ススキで大きな輪を
作ったのが「茅の輪」。
神社などでは、
「茅の輪」をくぐって
無病息災を願う
行事を行っています。


今でも、大きな茅の輪くぐりが恒例になっている神社も多くみかけます。
近所の神社の祭礼などに、
見かけませんか。

草原で風に揺れるススキは私たちの生活に密着している植物なのです。

━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 はだすすき 尾花逆葺(さかふ)き 黒木もち

     造れる室(むろ)は 万代(よろづよ)までに
(万葉集)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  秋風に たゆみなびゆく すすきかな
   

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| | 09:17 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
ジュズダマ(数珠玉)のネックレス

 道端でで大きく育っている
ジュズダマ(数珠玉)も夏に花が咲いて
今は、数珠にならんと実が色づき始めました。
ジュズダマ(数珠玉)の別名は「トウムギ(唐麦)」です。
花をつけたジュズダマ
三丁目の夕日の時代の女の子達は
ジュズダマで遊んでいたと思います。

この季節になると畑の畔道などに行って
このジュズタマを集めて
糸を通してネックレスにしたり
お手玉の中身として使ったり、
ままごと遊びで、ごはんになったり
色々遊んだ思い出を
思い起こさせるジュズダマ。
熱帯アジア原産の多年草です。

ジュズダマを見つけるとついつい、
集めてしまいたくなって
しまう人もいるのではないでしょうか。

外来植物のジュズダマは、
古代から栽培されていて、
装飾品として重宝されていました。




アマゾンやタイの山地での少数民族は
今でも装飾品として、
ジュズダマを利用しています。 色づき始めたジュズダマ

日本でも、庶民は乾燥させた
ジュズダマに糸を通して
使っていたのではないかと思います。

いつの時代からか、使われなくなり
その価値はなくなってしまっています。

それでも昭和の頃は
女の子の遊び道具として
重宝されていたようですが、
価値観もかわり、
見向きもされなくなっています。

現在はお茶として飲まれている
「ハトムギ」は
ジュズダマの栽培種と考えられています。
日本にも古い時代に渡来してきて
主に、薬用として利用されてきました。

河原に風に揺れる、
つやつやの実のジュズダマ。
小さな頃をおもいだして、
ジュズダマネックレスなどいかがですか。

 

━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

月読の 面に近く きららめく

     青じゅずだまの 秋風のこゑ(北原 白秋)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  数珠玉の 堅き実を摘む 幼遊び
   

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| | 15:31 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |


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