野花や草木の散歩道で一句

道端の野花、そして草や木。
どこにでも咲いている道端の可憐なお花。
古の歌から生い立ちを辿り、草木たちの古を思い浮かべながら
草花や木々を眺めてみませんか。
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木へんに秋の楸(ヒサギ)、アカメガシワ
里山の道の楸
木へんに四季の字を綴ると

冬は(ヒイラギ)
春は椿(ツバキ)
夏は(エノキ)

秋は、楸(ヒサギ)
この字は、ご存知でしたか。
私は、知らない漢字でした。
それぞれの季節の文字、植物があったのです。

楸(ヒサギ)は、アカメガシワ又は
キササゲの古名となっています。

平安時代の「和名抄」によると
「秋はヒサギ・・・」とでてきます。
そのヒサギが何であろうかということで諸説があります。

キササゲ説
アカメガシワ説

江戸時代に貝原益軒が編集した「大和本草」のなかで
「楸は ヒサキといい、またカシワと呼ぶ・・・」という説明が
根拠とされているようで、
現在では、アカメガシワ説が有力とされています。

夏に咲楸の花 
アカメガシワは、
そのまま育てば大木になります。
このアカメガシワの「楸」の文字が、
あまり顧みられないように
軟らかな木というよりは、
草として捉えられているのでは
ないでしょうか。

現在では、道端に生える
低木種のようになっています。

それは、季節の変わり時の、
雑草刈りの時に
雑草として刈られてしまうためでしょうか.

春から秋にかけて道端や野原で
小さな赤い芽を上に向けて育っています。

季節はずれでも草むらの中で、
紅い芽を先端につけて育っている姿に
アカメガシワの逞しさを感じます。


本来ならば、春には、若い幼葉の先端がきれいな鮮紅色になり
夏に、青葉の中に白い穂状の花をつけます。
秋に黄葉しながら落葉し、大木となっていきます。


そして食物を包む意を持つ「カシワ」という名前のように
この葉の上に米などを盛っていたので、
五菜葉(ゴサイバ)・菜盛葉(サイモリバ)という別名があります。


アカメガシワの葉に、米を盛ったり供物を盛ったりして
田の神の祭りや、神事に使われていました。
この葉に供物をのせる神社もあります。

赤芽がきれいな楸

新芽の美しい赤い色は草木染めの原料となります。
夏には樹皮をはいで乾燥し、胃潰瘍や下痢止めにも使います。
軟らかな材質を利用して、下駄や薪などにも使われてました。
アカメガシワの木は、古来から生活に欠かせない木でした。

春の赤芽のきれいさとは裏腹に
秋の紅葉のときは、黄葉し、いつの間にか落葉してしまいます。
秋の終わりはあまり目立たないアカメガシワなのです。

秋深い情景を詠んだ短歌です。

━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

楸(ヒサギ)生ふる 庭の木陰の 秋風に
   
   一声そそぐ 村時雨かな 
(藤原 為家)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  あきあかね  里山の道  赤芽柏

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| | 15:14 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
秋の訪れを知らせる、薄紫色のシオン
背丈高く伸びるシオン
秋の花といえば菊ですが
菊が咲きそろう前に、
道端や野原では野菊が
咲きだします。
その中でも、
背が高く紫色の花が
優雅に咲く「シオン」。 
背丈は2m以上にもなり
上部で枝分かれをして
分岐した先端に紫色の小花を
散房状に沢山つけます。

一昔前は、紫色のシオンが秋の訪れを知らせていました。
原っぱの片隅に株がひしめき合い、薄紫色で彩られていました。
その薄紫色の花と、シオンという響きが頭に残り
一番早く名前を覚えられた、花の一つです。
今では、農家の畑の片隅や土手などで見かけるだけとなりました。
薄紫の花、シオン
キク科のアスター属に
分けられるシオンですが
日本の野菊として、
捉えられているようです。

日本では最も古くから
栽培されていました。
中宮の庭で王宮の秋を
彩っていたと源氏物語にも
出てきます。

漢名の「紫苑」に
由来しています。
古名は「シオニ」。

12世紀の今昔物語では
父母を亡くした兄弟が、父母の墓にそれぞれ草花を植える話が出てきます。。
兄は、カンゾウを植え
弟は、シオンを植えます。
片隅に咲く、シオン
出世した兄は、父母の死を早く忘れようと
別名が忘れ草と呼ばれる、カンゾウを。
弟は、忘れたくないと、シオンをそれぞれが植えます。
その植えていたところを鬼が見ていたのです。
そして、兄を没落させ、弟を盛りたてるのです。

中国名の一つ「返魂草」から来ている逸話なのでしょう。

シオンは、8月の終わりごろから10月くらいまで咲いています。
長く咲くシオンは、虫もあまりつかずに強靭な花です。
背丈を高くして、沢山の花が見下ろすように咲き続けます。

十五夜にも、十三夜にもススキと挿すことが出来る重宝な花です。

今回の歌は古今和歌集からの
シオンの古名「しをに」を詠み込んだ歌。

わざわざ故郷の
紫のシオンの花を見に来たのにもう色あせてしまったと…

この歌の時期は、十三夜過ぎくらいでしょうか。

お彼岸のお墓参りの時などに、
紫色のシオンに出会うかもしれません。


━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ふりはへて いざふるさとの 花見むと

    こしをにほひぞ うつろひにける
  (古今集)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   丈たかき 紫苑がそよぎ 秋彼岸

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| | 15:28 | comments(0) | - | pookmark |
花野で楽しむ、秋の七草
秋の七草、
春の七草は、寒い中から出てきた若葉を
慈しむように、食べる…食べる七草です。
七草粥など、行事の中にも取り入れてられます。

しかし、秋の七草は特に行事は伴っていません。
秋の七草は、あまり派手な花はなく、
夏の終わりから秋の到来をそっと教えてくれるように咲きます。
野の花が咲き乱れている場所を「花野」といいます。
秋風を受けながら
花野で花を眺めて、歌を詠むことを楽しんだものなのでしょう。
秋の七草は、眺める七草といえるでしょう。

その七草が詠まれた歌は多くありますが
秋の七草を詠んだ歌と言えば、
山上憶良の歌。
秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り
かき数ふれば 七種の花

七草の中で一番知られる、萩の花
秋の野に咲いている花を
指折り数えてみると、
七種類ありますという歌です。

その七種の花はと、
歌が続きます。

萩の花 
尾花 葛花 
なでしこの花
をみなえし 
また藤袴 朝顔の花

右が萩の花です。


そして尾花、すすきです。
秋風になびく尾花

葛の花と なでしこの花
どこまでも蔓が延びる葛、葛の花 可憐に咲くなでしこの花

どうして女郎花と書いたのでしょう、オミナエシ
女郎花と書く、オミナエシ

藤袴の野生種は、
日本の絶滅危惧種に指定されています。
野生種としては、見られなくなっています。
秋の七草として
詠っている山上憶良の歌一首だけに詠まれています。
藤袴は、当時咲き乱れていたのでしょうか、
疑問に思うところです。

そういう訳で藤袴の画像はありません。

山上憶良の歌では、朝顔の花…
この朝顔の花は、
「桔梗」「むくげ」などいろいろ諸説があります。
朝顔の花は、桔梗のことです  
秋の七草の朝顔を考えると、
朝顔の花は、
中国から渡来してきた栽培種。
ですから、野に咲く花とは違います。

「新撰字鏡」(901年頃)によると
桔梗に、「阿佐加保」を
あてていることから
桔梗だという説が
受け入れられています。


秋晴れの一日
花野散歩に出かけて
秋の七草を眺めながら、一句楽しみませんか。


━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り

     かき数ふれば 七種の花 
  (万葉集)


萩の花  尾花 葛花 なでしこの花

    をみなえし また藤袴 朝顔の花
 (万葉集)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  いとすすき 花野の萩 秋の月

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| 秋の七草 | 16:57 | comments(1) | - | pookmark |
秋の七草の一つ「萩(ハギ)」
秋風がたちはじめて
秋の野花もそこここで、目に入るようになりました。
咲き始めた萩の花  
秋の花で一番
知られているのが、
萩(ハギ)の花でしょう。
万葉集で詠まれた
植物の中で、
一番多いのが
萩(ハギ)です。

秋の七草の一つ「萩(ハギ)」です。 

ハギの種類は世界にも多くあり、
日本のハギは、中国からの1種が、日本に来ました。
中国から来たハギですが
「萩」の字は、日本で作られた国字です。
何時のころに作られたのでしょう。
この「萩」の字は、万葉集では使われていません。

「和名類聚抄」によると
ハギは「鹿鳴草」の名で出ています。
ハギの花  
鹿は、秋の恋の季節に、
雄シカが鋭く鳴きます。
ハギの花が咲く景色の中で、
鹿の鳴き声が
秋を偲ばせたのでしょう。
万葉集に詠まれるハギは
大和全域の地域で詠まれていますが
一番多いのが、奈良の高円です。
若草山に並ぶ、
高円山のふもとにある
白毫寺や新薬師寺などは、
ハギの寺としても知られています。

万葉の頃から秋が巡ると、ハギの咲くころには
奈良では鹿の鳴き声が響いていたのでしょう。

秋の風物として詠まれている「ハギと鹿」ですが、
花札では、鹿に紅葉が描かれています。
しかし、鹿と紅葉が詠まれた歌はありません。
鹿とハギが詠まれた歌は43首あります。
その歌の中には、妻恋いしく鳴く鹿が、多く詠まれています。

この萩は、山野に生えていたものを
万葉の頃に、庭に植えて栽培されていた様子が伺える歌があります。

庭に植えられて愛でられている、ハギの歌です。


━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

恋しくは 形見にせよと 吾背子が

  植ゑし秋芽子(ハギ) 花咲きにけり 
(万葉集)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  雨上がり まばらに咲ける 萩の花

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| 秋の七草 | 16:38 | comments(0) | - | pookmark |


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