野花や草木の散歩道で一句

道端の野花、そして草や木。
どこにでも咲いている道端の可憐なお花。
古の歌から生い立ちを辿り、草木たちの古を思い浮かべながら
草花や木々を眺めてみませんか。
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韮一茎(かみらひともと)
空の雲に秋を感じます。
今日は畑の畔道に咲いている、白くて可愛いニラの花。
畑の横に咲く、ニラの花
「韮(ニラ)」は今でも、
食卓によく
登場する野菜です。
特に、中国料理では
餃子にはなくては
ならない食材です。
韓国料理でも、
チヂミに入っています。
アジア原産のニラは、
どの国でも
食べられています。


ニラの古名は「コミラ」、「ミラ」
春に柔らかな葉を出し成長します。
ニラには独特の臭みがあります。
その臭みが餃子などにはかかせないのでしょうが…

秋風が立ち始めるころに、その臭みを感じさせない
白い清楚な美しい花を咲かせます。

日本には中国から来て、自生していたのでしょう。
いつ頃から栽培されていたかはわかりませんが
延喜式「内膳」には栽培していたとの記述はあります。
ですから、長い間栽培されてきた、植物の一種です。
下痢や吐血を止める薬用植物としても使われていました。
白く可愛いニラの花
このニラは
中国の最古の
詩集「詩経」に、
子羊と
わかいニラを供えて
天神を祭ったという
記述があります。

かなり古い歴史を
持つ植物です。


日本の古事記でも
最初の天皇であるとされる
カムヤマトイワレヒコノミコトが東征をした時、
大和の国で、土地の豪族の屈強な抵抗にあいます。

そして、苦戦をしたナガスネヒコと再び戦う時に
兵士たちがうたった歌として、ニラが出てきます。
「カミラ」のなかの「カ」は香りを表わしているのかもしれません。

兵士たちがうたった歌が、功を奏したかはわかりませんが
苦戦を強いられていたナガスネヒコをやっと倒して
大和の地に入り神武天皇となります。
倭国のはじまりです。


━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

みつみつし  久米の子らが  粟生(あわう)には  韮一茎(かみらひともと)

  そねが茎(もと) そね芽繋ぎて  撃ちてし止まむ
 (古事記)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

道細し 畔道に並ぶ 韮の花

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| | 13:48 | comments(0) | - | pookmark |
野老蔓に似たヤマノイモ
野老蔓は花ばかりの写真でした。
そこで、似ているヤマノイモの画像をアップします。
蕾をたくさんつけたヤマノイモ

野老蔓の花も可愛いですが
ヤマノイモの花も、咲いているのかどうかわからない
小花が涼感を誘います。

もともと、中国雲南省の原産のものです。
中国では紀元前から栽培されていたようで、
日本でも、渡来して栽培されていたというのが奈良時代の頃でしょうか。 

今では野生化しているのがほとんどです。
強い生命力は、自然薯とともに培われたものでしょう。
雨露より小さいヤマノイモの花
茎は細長く、左巻きに
他の植物にからみつきます。
花の後は、
三稜翼を持った果実を結びます。
葉の付け根には
珠芽の「むかご」をつけます。
根っこは、自然薯。
掘るのは難しいです。


「むかご」は根の自然薯と同じ栄養があるそうです。
晩秋の散歩で、見つけられるかもしれません。


北原白秋の歌の中に、花の可憐さがうかがえる一首。
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目にたたで  涼しきものは すずの秀(ほ)や
     月の夜頃の 山いものはな
(北原白秋)
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| 似ている植物 | 09:58 | comments(0) | - | pookmark |
長寿の祝い物、野老蔓(トコロヅラ)
野老蔓
秋の気配が、見られるこの頃
木にまつわりついている、
草も多く見られます。
 
優しそうな花を咲かせる
蔓性の草、「トコロ」
漢字では、「野老」と書きます。
古名は「トコロヅラ」と云われてます。
ヤマノイモと似ていますが、
このトコロは、
秋のムカゴができません。


牧野富太郎の説では
野老(トコロ)は海老に対する名前だそうです。

野老とは、横に這う根茎があって、ひげ根が多いものを
腰の曲がった老人と見立てています。

海の祝い物の、エビを海老といい、
山の祝い物の、トコロを野老とつけ
共に、長寿の祝い物と見立てたのです。

トコロのひげ根は、長寿を祝うための
正月飾りとして使われています。

トコロヅラの根茎は、横へ横へと延びていき
ひげ根を出していきます。
その根茎は、苦味を抜けば食用となります。

ふるさとの大和を目の前にして、命を亡くした
倭 健命(ヤマトタケルノミコト)の墓の周囲の田んぼの稲幹(イナガラ)に、
まとわりついているトコロヅラと、古事記に登場しています。
満開の野老蔓
駆け付けた后や
御子達が泣きながら
うたった歌です。
トコロヅラが
まつわりついている稲幹を
倭 健命に
見立てていたのでしょう。


天皇の皇子である倭 健命は、
稲霊があったとされていたのでしょうか。
亡くなって、倭 健命の霊は、白鳥となります。
その白鳥も、穀鳥とされています。 

若くして亡くなった倭 健命の霊に
まつわりつく、野老蔓(トコロヅラ)の対比が
深い悲しみを表わしているようです。

今回は、倭 健命を悲しむ歌です。


━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 なづきの田の 稲幹(イナガラ)に 稲幹に
 はい廻(モトホ)ろふ 野老蔓(トコロヅラ) 
 (古事記)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  茂る木に まとわりて咲く 野老蔓 

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| 初秋 | 16:46 | comments(0) | - | pookmark |
秋の七草の「葛(クズ)」
葛の花 

クズは、真夏の日差しのなか、
大きな葉を茂らせています。

草地があれば、
どこまでもどこまでも
蔓を伸ばしているように見えます。

今では、雑草刈りの一番の
ターゲットになっています。


繁茂した葉と葛の花 今では、日本のどの地域にも
繁茂している葛ですが
古での葛は、大和吉野川畔の
国栖(クズ)地方に多く
葛粉の産地であったことに
よるといわれています。
今では葛というと、
吉野葛が有名です。
 
花は秋の七草にふさわしく
紫紅色の蝶型小花を
房状に咲かせます。
大きな葉の間から咲く、
花穂に秋を思わせます。


古来では、このクズは
この蔓の繊維で、葛布を織り
この根のでんぷんで、葛粉を作り
根を乾燥させて、葛根湯として解熱剤になり
葉が落ちた後の蔓で、籐行李を作る。
生活になくてはならない、植物でした。
繁茂する葛を見ていると、
現代の生活に役に立たないかと思う今日この頃です。
色あでやかな葛の花
夏場の草地に生い茂るので
花を愛でるというよりは、

はびこる雑草として
捉えられていたせいか、
どうかはわかりませんが、

七草のクズの花を詠った歌は
一首だけです。

恋人が懸命に夏草刈って、
作ってくれた葛布が仕上がり
着せてくれる日を待つ若者の歌です。


━━━ 今日の短歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 剣太刀 鞘ゆ入野に 葛ひく吾妹(わぎも)

    真袖もち 着せてむとかも 夏草刈るも 
(万葉集)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  白き裏葉 紅葛花の 雨除けに

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| 初秋 | 14:03 | comments(0) | - | pookmark |
里山の、クヌギの実、つるばみ
時々行く、里山に朝早く散歩に出かけました。
朝日のツルバミ
今年は、雷が多く、
夕方には雨が降りますので
暑い中にも、緑の色が
濃いように感じました。
ふと頭をもたげると、
クヌギの花が
開きかけてます。


古代では、クヌギの実は「ツルバミ・橡」と言われました。
現在では、クヌギの実はどんぐりといわれていますが
古名は、「ツルバミ」です。

このツルバミは、いつの頃から日本のこの地に立っていたのでしょうか。
縄文の頃には、ドングリを食用にしていたらしいですから
もう何千年もの間、生えているのです。

古代ではこのツルバミの木は、ヒトの生活にはなくてはならない木でした。
ツルバミのカサは、ツルバミ染。
万葉の頃は、染料として使われていました。
林の中で集めれば相当な量が取れたのでしょう。
これから開く、ツルバミ

身分の低い人の、衣服は
ツルバミで染めたものでした。

このツルバミ染めの色は
濃いねずみ色です。

平安時代になると、
喪服に使われたそうです。

樹皮は、薬用として使われ、
木材は、焼かれて炭となり、燃料として使われていました。
見事なほど無駄なく、ヒトと共生してきたツルバミです。
栽培もしやすかったことも要因かもしれません。

現在でも、クヌギやコナラの木はシイタケ栽培の台木として使われています。
冬に落ちる枯葉は、良い腐葉土になります。

この「クヌギ」は、
国中が愛する木という意味で「国木」とつけられ、
それが「クヌギ」と言われるようになったようです。

里山の保存運動の声があちこちで聞かれます。
里山を保存するには、その里山の木々を材料に
今まで以上に、私たちの生活に使っていく。
そして、又育てていくという、
サイクルが出来てくればいいのになと思います。

今回は、大伴家持の歌です。
きれいな紅色はすぐに褪せてしまう。
地味な色の着ふるした衣には、及ぶはずがないと詠っています。

━━━ 今日の短歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 紅(くれない)は 移ろふものそ 橡(つるばみ)の

     馴れにし衣に なほしかめやも
  (大伴家持)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  光さす 木の葉の影に 橡(つるばみ)花

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| 初秋 | 16:05 | comments(0) | - | pookmark |


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