野花や草木の散歩道で一句

道端の野花、そして草や木。
どこにでも咲いている道端の可憐なお花。
古の歌から生い立ちを辿り、草木たちの古を思い浮かべながら
草花や木々を眺めてみませんか。
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ハチスと呼ばれた蓮の根は貴重な食べ物
暑さの中、朝早く開花するハスの花
私の頭の中には、極楽浄土というイメージが刷り込まれているため
ハス畑を通るときの、ハスの葉が揺れる風が
別世界からくる風に思われてきます。
ハスの花
仏教は紀元前500年頃に
出てきます。
インドでは、
ハスの花を多産や
生命誕生の象徴とされ
仏教の教えに習い、
極楽浄土に
見立てられています。
仏教には、ハスの花は
なくてはならないものです。


このハスは、中国では仏教が伝わる前から
実用植物として栽培していたと記述が残っています。

万葉の頃はどうだったのでしょう。
日本に、仏教が538年に飛鳥の地に入ってきたとされています。
それでも、仏教とハスが結びつくのはまだまだずっと後のことです。
万葉集に詠まれた歌も、仏教を感じさせない写生的な歌です。
花弁が散るとハチス  
古代では、「ハチス」と
呼ばれています。
花びらの散った後が、
ハチの巣に似ていたことに由来しています。
ハスの花は、
3日間咲いて花びらが散り
4日目にはハチスになります。


万葉の頃のハチスは根から葉まで使われていて
ハチスの根、レンコンは貴重品だったことが
平安時代初期の儀式や作法の集大成の「延喜式」にも見られます。
そこには、正月の法会の供養料は、「ハスの根半節」となっています。
ハチスの根だけでなく、葉は料理を盛る皿に、若葉も刻み、種子も食べた。
生活になくてはならない有用植物でした。

花を愛でるようになるのは、江戸時代からのようです。

そして、千葉県検見川の2000年前の地層から出土されたハスの種。
弥生時代後期のハスの種は、2000年の眠りからさめて開花しました。
開花させた人の名前をとって「大賀ハス」と呼ばれています。
各地に種が出土され、開花している例は多々あります。
一般的に、「古代ハス」と言われています。

万葉集に出てくる、平城宮の門を護る役人の歌

雨の後の、ハチスの葉の真珠のような
水滴の輝きを久しぶりに見たいと詠っています。

━━━ 今日の短歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉(ハチスハ)に
      たまれる水の  玉に似たる見む
 (万葉集)


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

暁に  蓮の葉ゆれて  露光る

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| 盛夏 | 15:30 | comments(0) | - | pookmark |
元気にまとわりつく 「屁屎蔓(ヘクソカズラ)」
梅雨が明けて、いよいよ夏到来です。
可憐な屁屎蔓
昼間は、
庭の草木は暑い太陽の下で
うなだれています。
草は、この暑さで、
ぐんぐん伸びる季節です。
夏は、草が敵に見えてきます。 
そんな草のなかで、
どんどん他の木に廻りついている草。
草取りの 
最初のターゲットになりそうな草。


「屎蔓(クソカズラ)」
これだけでも、名前のインパクトが強いのに
その上に、「屁(へ)」がつき
「屁屎蔓(ヘクソカズラ)」といわれています。

私は、この「屁屎蔓」という名前に出会ったのが、
草などに興味を持ったきっかけとなっています。
見た目と違って、匂いだけで嫌われている
いじめられっ子というような印象でした。

その名前は、なんてグロテスクな名前なんだろうと…
子供の頃の暑い夏には、あちらこちらで巻きついていました。
この小さな花をとって、遊んでもいました。
でも、名前なんて気にしませんでした。
きれいな花だという印象が、子供心に残ってました。

もう少し大きくなった時に、
この花の名前を聞いた時、吃驚するより落胆したものです。
早乙女蔓とも呼ばれている屁屎蔓
別名には
「早乙女蔓(サオトメカズラ)」
とも 言われています。
花の姿を、
早乙女がかぶる笠に
見立ています。
この名前ですと、
可憐な花という印象です。


決して、近づいて匂うという花ではありませんが
葉をもんだりすると、何とも言えない悪臭がたちこめます。
大人になって、草取りするようになって
この匂いというより、悪臭に納得したものです。

このクソカズラというのは、万葉集に出てきますから
万葉の頃から、花の可憐さよりも 悪臭のほうが印象強かったのでしょう。

今では、更にその上に
いつの頃からか「屁が付いてしまったのです。

万葉集に詠まれている歌は
からみつく屎蔓のように、ずっと宮仕えしましょうという
健康的な歌です。

━━━ 今日の短歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

かはらふぢに 延ひおぼとれる 屎蔓

       絶ゆることなく 宮仕(みやつかえ)せむ 
(高宮王)


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  屎蔓 早乙女蔓と 思いけり
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| 盛夏 | 16:44 | comments(1) | - | pookmark |
八重葎(ヤエムグラ)が茂る、荒れ果てた貧しい屋敷
源氏物語でも、
末摘花の邸は、使用人もいなくなり
庭にはヨモギが生い茂っていたとされています。

荒れ果てた屋敷の象徴として
ヨモギやヤエムグラが、詠われています。

万葉の頃の八重葎(ヤエムグラ)というのは
現在言われている
金葎(カナムグラ)だとされています。
カナムグラ
葎(ムグラ)というのは、
荒れ地に生える
雑草のことを指しています。

金葎(カナムグラ)は、
散歩の途中で、
よく見かけていると思います。
茎が金のように硬いということで
ついた名前です。
そして、茎と葉にトゲがあり
硬い茎に触ると、棘で、痛いです。


初夏の頃からぐんぐんと、草丈を伸ばし
真夏の暑い頃には、空地を覆ってしまいます。

硬い茎や、茎のトゲなどで
谷や空き地に入る人を、拒むように繁茂していきます。
ヤエムグラ
今、言われている
八重葎とは、
アカネ科のもの。
同じ、
葎の仲間ではあります。

春から初夏まで、
荒れ地に繁茂しています。
そして、
金葎が元気になる頃、
枯れていきます。



八重葎と金葎で
季節と季節をバトンタッチしているようです。


この万葉集の歌は
一対の相聞歌になっています。

(問)は、そんな八重葎が生えている鬱蒼とした中で
いとしい人が、家に訪ねてきてくれた驚き喜ぶ、女性の歌。

(答)は八重葎が生えているいとしい人を訪ねた男性の歌。

荒れ地に生える八重葎と
恋人同士の素朴な喜びが、対比されています。

千年もの間、荒れ地を覆う
金葎や八重葎。
葎は、雑草のなかでも
振り返られないというか
邪魔にされている存在です。

その生命力の強さで、長い間、
人の手が入らない荒れ地を
緑で覆うことによって、
下草や土を守ってきたかもしれません。


━━━ 今日の短歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(問)思ふ人 来むと知りせば 八重葎
     おほえる庭に 珠敷かましを
(万葉集)

(答)玉敷ける 家も何せむ 八重葎
     おほえる小屋も 妹とし居らば
(万葉集)


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

青々と 葎の茂みに 夏日影 
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| 盛夏 | 15:16 | comments(0) | - | pookmark |
光源氏にいたずら書きされた紅花…据摘花
梅雨の間に、満開になる紅花
源氏物語にも出てくるように、据摘花(スエツムハナ)と呼ばれています。
紅花

原産地は中近東で、
中国から
奈良時代の頃に、
日本でも
栽培されるようになりました。
中国の「呉」の藍ということで
「クレナイ」とも
呼ばれています。


この花は、女性にはなくてはならない花、
名前の通り、この花から、紅をとり、口紅になります。
その他には、食品の着色料に使ったりもします。
天然の着色料です。
種子からは、油が摂れ、紅花油になります。
ヘルシーな油で、かなり高価な油です。

若葉は、婦人の通経剤にもなるそうです。
私たちの生活に欠かせない紅花です。

源氏物語では、据摘花として出てきます。

常陸宮の姫君が
大きな屋敷で琴を弾きながら一人暮らしをしていると聞いた源氏。
頭中将もその姫君に手紙を送ったりしている。

ライバルに先んじて月の出の遅い星のきれいな夜に訪れ、一夜を過ごす。
しばらく経った、冬の日に又姫君のところに出かける。

その夜は雪。
朝、雪が積もって荒れた屋敷も、銀世界。
その、白い雪の照り返しの中で
姫君の顔を見て、鼻が不格好で花の先が赤い、
額はひろくて、身体は骨が見えるくらい痩せている。
通う男がいないはずだと、すっかり失望する源氏。

しかし源氏は、憐れみを覚えてめんどうを見ることにする。
自分だけでも優しくしてあげようと思う源氏。

しきたり通りに年末にその姫から届いた、源氏の晴れ着。
その晴れ着は光沢のない旧式の趣味の悪い衣でした。
その晴れ着を見て、姫の好みの悪いのに、落胆します。

源氏が思はず姫の手紙に、いたずら書きをした歌です。
どうして、花(鼻)の先の赤い、
据摘花を手に入れてしまったのだろうと後悔の気持ちを…
赤くなる紅花

アザミに似た紅花は
最初は黄色い花を
つけますが、
しだいに花が
赤くなります。
花の先が赤いと
鼻の先が赤いと
いうことで不器量な女と
捉えられています。




けっして、不器量な花とはおもえませんが…

━━━ 今日の短歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

なつかしき 色ともなしに なににこの
      据摘花を 袖にふれけむ
(光 源氏)

━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

風に揺れ  紅の花先  天仰ぐ

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