━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
やどりせし 人のかたみか ふぢばかま
わすられがたき 香ににほひつつ(紀 貫之)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
秋の七草として、
山上憶良に詠まれている「藤袴(ふじばかま)」。
水辺に生える「藤袴(ふじばかま)」は、
乾燥させて、香り高い香料として
又、虫毒を除き、不祥を避ける草として使われていました。
秋の七草の他の、
はぎ、すすき、くず、なでしこ、おみなえし、ききょうは
割合どこにでも見られ
万葉集の中でも詠まれていますが、
「藤袴(ふじばかま)」だけは、
山上憶良の歌だけです。
奈良時代以前に、中国から渡来しています。
中国では、“蘭”と表現されていました。
元来中国では、
芳香を放つ草を“蘭”と総称していたようです。
延喜年間(918年)に出来た、“本草和名”に
“蘭草”の和名は“布地波加末(ふぢはかま)”と記されています。
平安文学の
源氏物語の第30巻に「藤袴(ふじばかま)」があります。
その本文中には、
「…蘭の花いとおもしろきを 持ち給えりける…」とあります。
その芳香から“蘭”とも云われていたのが伺えます。
今回の歌も
泊まっていった人が置いていった「藤袴(ふじばかま)」の
匂うよい香りが忘れがたいと、詠っています。
古来は、川辺などに多く生えていたと思われますが
今では、あまり見かけなくなり
希少の植物となってしまっているようです。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
秋の野に むらさき匂う ふじばかま
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
応援ありがとうございます!
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
故郷を 秋来て見れば 水涸れし
池のみぎはに 蓼の花咲く(幸 文)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
秋風に、「桜蓼(さくらたで)」の花が揺れています。
私達の廻りの野草の中でも
蓼の仲間は多く見受けられます。
沢山の種類の中には、
食用になるものもあります。
万葉集にも詠まれた“やなぎたで”は
双葉の時から、辛味を持ち
刺身のつまなどに使われます。
水辺に自生する桜色の「桜蓼(さくらたで)」は
花の色が淡紅色で、
春のさくらを連想させるところからの名です
多年生で、地下に根を伸ばして増えていきます。
秋に長い花穂をつけます。
数多くある蓼のなかでも
花が最も美しいものです。
しかし、花とみているのは
萼片なのだそうです。
花びらのない「桜蓼(さくらたで)」でしょうか
ちょっと哀愁を感じる花でもあります。
今回の歌は、
故郷を秋に訪れた時の
水辺に生える蓼の花に
ひっそりとした情景を詠っています。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夕陽追い 蓼の花咲く 里の秋
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
応援ありがとうございます!
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
見しひとも なき山里の 岩がきに
心ながくも はへる葛かな(紫式部)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
赤紫の花弁の穂が秋風に揺れています。
大きな木に絡みつき咲く「葛(くず)」の花。
いつもより、雨も多いこの頃では
葉も大きめになって道路までも蔓が伸びています。
土手や荒地に
わがもの顔にはびこる勢いは
目を見張るものがあります。
秋の気配が漂う時期に高々と咲く
「葛(くず)」の花。
マメ科の植物と同じような花は、
香りもよく、古代色の花びらは
優雅さを漂わせます。
そんなところから、
山上憶良は、秋の七草の一つに選んでいます。
葉も蔓も
茶褐色のかたい毛をもち
他の植物を寄せ付けないで大きくなっています。
大きな葉を、大きな木に絡ませ
瀕死の状態にしてしまう程の勢いを見せます。
帰化植物が多い中で
この「葛(くず)」は、海外へ渡って増え続けている植物の一つです。
100年程前アメリカでも、
砂漠化を防ぐ緑化植物として植えられました。
しかし、どこまでもはびこる
その勢力のすさまじさから
今では、困っているようです。
古来からある日本では、から
大きく育った根は貴重なものとされてきました。
根からは取り出した葛粉は、
料理に使われてきました。
又、薬用として“葛根湯”として使われたりと、
私達の生活に役立つ植物として根を張ってきました。
今回の歌は、
「葛(くず)」は、その昔平安の頃も、
根を張り広がっていたのかと思わせます。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
見渡せば 首をもたげる 葛の花
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
応援ありがとうございます!
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
恐ろしき 黒雲を背に 黄に光る
向日葵の花 見ればなつかし(木下 利玄)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夏の暑さの中で
太陽に向って咲く「向日葵(ひまわり)」
この「向日葵(ひまわり)」の名前の由来は
太陽と共に回転する花と言われています。
若い蕾は、太陽の動きに連動しますが
育って大きな花が咲くと動きません。
「向日葵(ひまわり)」の原産地はアメリカ大陸です。
ヨーロッパ大陸に伝えられ
日本伝来は、江戸時代です。
日本で最初に記した、“貝原益軒は”
夏のシンボルの様な花の「向日葵(ひまわり)」を見て
“最も下品なり”と言ったそうです。
太陽を思わせるこの花は、
大きなものでは、2m近く伸びるのもあります。
大型の黄色の花は、多くを主張していたのかもしれません。
この「向日葵(ひまわり)」は、
種子が食用や油になり
葉なども飼料になる有用植物です。
原発事故が起きてからは
「向日葵(ひまわり)」が放射能汚染された土壌を浄化すると話題になっています。
“下品なり”とさげずまれた「向日葵(ひまわり)」ですが
これからは、あちこちで夏の太陽を受けて
大きな花を咲かせる事になるでしょう。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夏雲を 背に向日葵の 花揺れる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
白南風(しろばえ)の 暑き日でりの 竹煮ぐさ
粉にふきいでて いきれむるかも(北原 白秋)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
梅雨明けの暑さの中で
仁王立ちしているように伸びている「竹似草(たけにぐさ)」。
別名「竹煮草(たけにぐさ)」とも書かれます。
竹を一緒に煮ると柔らかくなるという説は誤りだそうです。
茎が中空なので、「竹似草(たけにぐさ)」。
空き地によく見かける
日本在来の大型の草です。
ちょっと、ピンときませんがけし科の植物です。
この植物、切るとだいだい色の汁がでます。
この汁は、内服すると中毒を起こします。
その一方では、皮膚病などの薬用にも使われています。
背は高く、白く粉がついたような茎
葉も切れ込みのある大きな葉ですが、
花は白っぽい小さな花を咲かせます。
なんだか、見ていても暑そうです。
そんな異様な姿に
江戸時代には、「チャンパ菊」と呼ばれていました。
ちなみに“チャンパ”とは
ベトナム周辺にあった王国の名前です
空き地にある大きな草として
今は、花が咲く前にも刈られてしまうこともあります。
小さな花が咲いた後、
お盆の頃に、豆のさやの様な小果を結びます。
乾いた小果が風に揺れると、カサカサと響く。
それが祖霊のささやきに似ているからでしょうか、
盆花として使われていました。
小さく響くことから“ささやき草”と呼ぶ地域もあります。
日本古来からの、大きな背丈の草。
花が終わった後の小果がささやく頃には
真夏の暑さになっているのでしょう。
今回の歌は、
梅雨明け間近の、真夏を思わせるような日。
竹似草を見ると、もっと熱気でむせかえるようだと詠っています。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
片かげり 白き小花咲く 竹似草
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
浅茅原 つばらつばらに もの思(も)えば
故(ふ)りにし郷(さと)に 思ほゆるかも(万葉集)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
梅雨空に、草だけが勢いを増しています。
そんな草むらの中で
「ちがや」の花穂が風を受けて揺れています。
この「ちがや」は、山や野のいたるところに見られます。
緑の草の中から揺れる「ちがや」、
なんだかホッとする野の風景となっています。
開花前の花穂は、「つばな」と呼ばれます。
この「茅花(つばな)」を集めて
“子供の頃に手でもんで食べた”
と、母に聞いた事があります。
戦前の子供のおやつだったようです。
「ちがや」は、万葉集にも多く詠まれています。
万葉の頃、現在と同じように、
山肌や草むらに多く生えていた光景だったのでしょうか。
“万葉集品物解”に、
「この草は、高く伸びず浅く生えるところから浅茅(あさち)といえり」
とあります。
そんなところから
万葉集では「ちがや」「つばな」「あさち」と詠まれています。
今回の歌は、細々とものを思っていると
「ちがや」の生えている自分の故郷が思われると詠っています。
荒れた土地になるとセイタカアワダチソウなどが多くなりますが
この「ちがや」も負けず劣らず、
土の下にしっかり根を張って広がっていく植物だとか。
アジアでは、熱帯植物がなくなった土地に
しっかり根を張り広げ育っていく
「ちがや」が問題になっているようです。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
雨上がり かすかに揺れる ちがやの穂
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
応援ありがとうございます
]]>
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
珠(たま)に貫(ぬ)く 楝(あふち)を家に 植ゑたらば
山ホトトギス 離(か)れず来(こ)むかも (万葉集)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
緑の木々の中に、
薄紫色をした小さな花を多数つけて風に揺れています。。
枝の先の小さな花は、優雅に咲いています。
万葉の頃の古名は、“楝(あふち)”。
高木に育つ、“楝(あふち)”をみて
清少納言は、
木は好まないけれども
花には、趣があると記しています。
この、薄紫色の花は愛されていたようです。
“楝(あふち)”とは、
花が藤に似て上向きに咲くところから
“仰藤(あふぐふじ)”や“淡藤(あわふじ)”と言われたところから
現在では、
「栴檀(せんだん)」と呼ばれています。
この沢山の花が沢山の実となり
晩秋には、黄熟して木の根元に散らばります。
この実を乾燥させたものは、
漢方薬として使われていました。
“栴檀は双葉より芳し”と言われますが
この木ではなく“白檀(びゃくだん)”のことです。
“白檀(びゃくだん)”は、熱帯アジアの香木です。
日本では育たないようです。
この「栴檀(せんだん)」、
暖かい海岸地方に育っています。
そして、道の辻や、丘の上などに植えられていました。
根元には、地蔵もまつられています。
この木は魔よけとしても使われていて
5月5日の端午の節句に
菖蒲や蓬と共に薬玉にして飾っていました。
今回の歌は
薬玉に使う“楝(あふち)”を庭に植えたなら
その花を慕って、ほととぎすが
絶えず飛んで来てくれるだろうかと詠っています。
大きな「栴檀(せんだん)」の木、
鳥も好む木だったのでしょうか。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
見上げれば 栴檀の花 咲きこぼれ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━
うす紅の なかにひと花 白妙の
匂いあまれる 芍薬の花 (大田 水穂)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
この言葉は、美人を形容する言葉です。
今では影が薄くなった言葉になっています。
今回は、見事に咲く「芍薬(シャクヤク)」の花。
中国や北欧原産の宿根草。
古来、薬用として渡来しました。
この根を乾燥させたものを
鎮痙薬、鎮痛薬として使っていました。
“エビスグサ”といわれていました。
勺とはけいれんを伴う病気をいいます。
多分てんかんの発作を伴う病気です。
あのシーザーもその病に悩まされていたのでしょうか。
ギリシャでもシャクヤクの仲間が栽培されて使われてました。
鎌倉時代以降は、和名よりも
漢名を「芍薬(シャクヤク)」と音読みで呼ばれています。
薬草として栽培されていましたが
この花の美しさから
江戸時代には、鑑賞用の栽培が盛んになります。
多くの品種が、書物に記載されるようになります。
中国でも最初に栽培された花として伝えられています。
「芍薬(シャクヤク)」はボタンの姉妹花。
牡丹は百花王といわれ
「芍薬(シャクヤク)」は宰相の異名を持ちます。
「芍薬(シャクヤク)」も牡丹も、華麗な存在感のある花で
似ていると言われますが
「芍薬(シャクヤク)」は草。
毎年、新しい芽を伸ばして花をつけます。
牡丹は、樹になり横枝を伸ばして花をつけています。
牡丹の花が終わる頃
「芍薬(シャクヤク)」の蕾が大きくなり開花します。
梅雨空に咲き揃う存在感のある花。
大きな「芍薬(シャクヤク)」の花が
咲いている情景をうかがわせる一句です。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
芍薬の 花びら開き 雨模様
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
応援ありがとうございます!
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夏ごとに 木の暮れまぎれ 見過ぐしし
花やまばうし 白白しろし (鹿児島 寿蔵)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
春の花の後の緑の季節。
緑の木立に、白い花が目につきます。。
その中でも青葉の中に、
たなびく白雲を思わせる様な樹木。
枝先に、花枝をだして白花をつけている「ヤマボウシ(山法師)」。
白い4枚の花弁が風に揺れて涼しそうです。
白い花弁状の4枚は、葉の変形で総苞片です。
遠くから見ると白い苞は、花びらのように見えます。
中央の丸い小さな蕾が集まっているのを頭に、
その周りの白い総苞を、頭巾に見立てて
「ヤマボウシ(山法師)」と、名付けられたと言われています。
これは、美濃・尾張地方で呼ばれていた方言だったようです。
白い苞の中心は
小さな花が咲いた後には、
秋にちょっと甘酸っぱい紅い苺のような実をつけます。
昔は、この赤い実を“イツキ”と呼んで食べていたと
母から聞いたことがあります。
この植物は、いつの頃からあったのか定かではありませんが、
江戸時代の文書では、“イツキ”とされていました。
「ヤマボウシ(山法師)」という名は、ドイツ人のシーボルトの
“日本植物誌(フロラヤポニカ)”にも記されています。
今日では、「ヤマボウシ」の呼称が標準になっています。
又、桑の実に似た赤い実から“ヤマグワ”とも呼ばれます。
大正四年、東京市長・尾崎行雄が
アメリカに贈ったさくらの返礼に
届いた“ハナミズキ”の別名は“アメリカヤマボウシ”です。
こちらの総苞片の方は、丸みがあります。
同じミズキ科の樹木です。
現在、街路樹に多く使われている“ハナミズキ”。
“ハナミズキ”の後に咲く「ヤマボウシ」。
それぞれが並んで植えられていて
花のリレーを奏でています。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
白き雲 遥か彼方の 山法師
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あまどころ あえかに曇る 峡の径 (小松崎爽青)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
初夏の風の中、
斜めに立ちあがる茎に
楕円形の葉を何枚もつけています。
葉の下には、白い花が揺れています。
「あまどころ(甘野老)」です。
猫背に生えて曲がっているから、
“甘野老”と言われたのだと思ってました。
しかし、この地下茎が甘くて食用になります。
若芽をさっとゆでると
甘みがあって美味しいとか。
そして、ひげ根が多いこの植物。
“ところ(野老)”の根に似ているところから
「あまどころ(甘野老)」と名付けられたのだそうです。
“海老”と“野老”
海の“海老”ではない
陸地の“野老”、野のえび、
ひげ根の多い地下茎が海老に似ているところからきています。
山野の草地に生える「あまどころ(甘野老)」。
この根茎を乾燥させたものは
滋養強壮にも用いられます。
今の季節、葉腋に白い筒状の花が
1〜2個の花を付けます。
花の先の方は、緑色を帯びて
その花が、風に揺れる姿に
夏の到来を思わせます。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
草分けて 葉茎を垂れる あまどころ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
松の下 熊谷草の 花一つ (一羽)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大きな袋状の花が特徴の「熊谷草(くまがいそう)」。
扇形の二枚の葉の間から
下部が大きな袋の様な花、ラン科の花です。
大きな袋のその形が、
その昔源平合戦の、
源氏の武将“熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)”に
ちなんで名づけられています。
流鏑馬にも見られるように
当時の戦では、背後の矢をよける為に
ふくらませた布の袋を背負って戦いました。
暗紅紫色の斑点のある大形の花。
その花を、背負った母衣(ほろ)と見たのでしょう。
暑い土地といば、“熊谷”と
夏の暑い日には、良くメディアに登場します。
“熊谷次郎直実”は、
埼玉県熊谷市の出身です。
漢名は、“蘭花雙葉草”
見たままの名前のようです。
以前は、日本全国の竹やぶの下などに群生がみられましたが
乱獲などで少なくなっています。
歴史上の人物の名前にちなんだ「熊谷草(くまがいそう)」。
それに対して“敦盛草(あつもりそう)”もあります。
歴史を感じる花、
源平の戦いが偲ばれて
それぞれの戦いを思うと寂しさも感じる花です。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
熊谷草 大きな母衣が みぎひだり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
苗代の 畦にすがれし たねつけ花
踏みつつ吾は かすみ網はる(酒井良一)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
さくらが咲いて
春の気温になると、そろそろ農作業も忙しくなります。
足元には、「たねつけばな(種漬花)」が目立ってきます。
白い4弁の十字の花をのアブラナ科の植物です。
田んぼ、溝、水辺などの湿地を好んで生えています。
日本全国、どこにでもみられる草でしょうか。
農家の人が、籾種を水を付ける頃に咲くので、
籾の種漬けの時というところから
「たねつけばな(種漬花)」と云われています。
いつから伝来したかはわかりませんが
中国での漢名は“砕米薺”で、野菜譜にでてきます。
春大きくなった
「たねつけばな(種漬花)」の葉を
胡麻和えにして食べるとおいしいとか。
江戸の文政のころから天保時代にできたといわれる
愛媛を代表する民謡の伊予節の一節に
“高井の里のていれぎや”とでてきます。
この聞きなれない“テイレギ”は、
“オオタネツケバナ”です。
たねつけ花より、先の葉が大きくなっているもので
刺身などのあしらい使われていて、
松山名物になっています。
松山出身の、正岡子規も好んでいたようです。
松山名物の“テイレギ”食べてみたいものです。
この「たねつけばな(種漬花)」を知ってから
道端の花が目立つようになると
農家の人達も忙しくなって来るのかと眺めています。
━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
春風と 種漬け花に 耕を知る
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━