野花や草木の散歩道で一句

道端の野花、そして草や木。
どこにでも咲いている道端の可憐なお花。
古の歌から生い立ちを辿り、草木たちの古を思い浮かべながら
草花や木々を眺めてみませんか。
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郷愁を誘うちがやの花穂
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  浅茅原 つばらつばらに もの思(も)えば


  故(ふ)りにし郷(さと)に 思ほゆるかも(万葉集)


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梅雨空に、草だけが勢いを増しています。
そんな草むらの中で
「ちがや」の花穂が風を受けて揺れています。

道端のちがや

この「ちがや」は、山や野のいたるところに見られます。
緑の草の中から揺れる「ちがや」、
なんだかホッとする野の風景となっています。


開花前の花穂は、「つばな」と呼ばれます。
この「茅花(つばな)」を集めて
“子供の頃に手でもんで食べた”
と、母に聞いた事があります。
戦前の子供のおやつだったようです。


「ちがや」は、万葉集にも多く詠まれています。
万葉の頃、現在と同じように、
山肌や草むらに多く生えていた光景だったのでしょうか。


“万葉集品物解”に、
「この草は、高く伸びず浅く生えるところから浅茅(あさち)といえり」
とあります。
そんなところから
万葉集では「ちがや」「つばな」「あさち」と詠まれています。


今回の歌は、細々とものを思っていると
「ちがや」の生えている自分の故郷が思われると詠っています。

風に揺れるちがや

荒れた土地になるとセイタカアワダチソウなどが多くなりますが
この「ちがや」も負けず劣らず、
土の下にしっかり根を張って広がっていく植物だとか。


アジアでは、熱帯植物がなくなった土地に
しっかり根を張り広げ育っていく
「ちがや」が問題になっているようです。


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  雨上がり かすかに揺れる ちがやの穂


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| 初夏 | 00:27 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
五月風とあまどころ(甘野老)
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━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



  あまどころ あえかに曇る 峡の径 (小松崎爽青)



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初夏の風の中、
斜めに立ちあがる茎に
楕円形の葉を何枚もつけています。
葉の下には、白い花が揺れています。
「あまどころ(甘野老)」です。

草地に生えるあまどころ



猫背に生えて曲がっているから、
“甘野老”と言われたのだと思ってました。



しかし、この地下茎が甘くて食用になります。
若芽をさっとゆでると
甘みがあって美味しいとか。



そして、ひげ根が多いこの植物。
“ところ(野老)”の根に似ているところから



「あまどころ(甘野老)」と名付けられたのだそうです。



“海老”と“野老”
海の“海老”ではない
陸地の“野老”、野のえび、
ひげ根の多い地下茎が海老に似ているところからきています。



山野の草地に生える「あまどころ(甘野老)」。

垂れるあまどころの花



この根茎を乾燥させたものは
滋養強壮にも用いられます。



今の季節、葉腋に白い筒状の花が
1〜2個の花を付けます。
花の先の方は、緑色を帯びて
その花が、風に揺れる姿に
夏の到来を思わせます。


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



  草分けて 葉茎を垂れる あまどころ



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| 初夏 | 00:43 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
大きな母衣の熊谷草
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 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  松の下 熊谷草の 花一つ (一羽)


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大きな袋状の花が特徴の「熊谷草(くまがいそう)」。


扇形の二枚の葉の間から
下部が大きな袋の様な花、ラン科の花です。

大きな花の熊谷草

大きな袋のその形が、
その昔源平合戦の、
源氏の武将“熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)”に
ちなんで名づけられています。


流鏑馬にも見られるように
当時の戦では、背後の矢をよける為に
ふくらませた布の袋を背負って戦いました。


暗紅紫色の斑点のある大形の花。
その花を、背負った母衣(ほろ)と見たのでしょう。


暑い土地といば、“熊谷”と
夏の暑い日には、良くメディアに登場します。
“熊谷次郎直実”は、
埼玉県熊谷市の出身です。


漢名は、“蘭花雙葉草”
見たままの名前のようです。


以前は、日本全国の竹やぶの下などに群生がみられましたが
乱獲などで少なくなっています。


歴史上の人物の名前にちなんだ「熊谷草(くまがいそう)」。
それに対して“敦盛草(あつもりそう)”もあります。


歴史を感じる花、
源平の戦いが偲ばれて
それぞれの戦いを思うと寂しさも感じる花です。


 


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  熊谷草 大きな母衣が みぎひだり


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| 初夏 | 01:08 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
白い「ノイバラ」
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 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  道の辺の 荊(うまら)の末(うれ)に 這(は)ほ豆の


    からまる君を      別れか行かむ (万葉集)


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緑が濃くなった雑木林。
雑木林の前の陽あたりの良い所に
白い「ノイバラ」が咲き出しました。


刺だらけの枝をあちこちに絡ませながら白い5弁の花が咲いています。

小さなノイバの花

「ノイバラ」は、
古来は「荊(うまら)」と言われていました。
「荊(うまら)」というのは、刺の多いものの総称です。
“ウバラ”“イバラ”ともいわれます。


今の季節、芳香を放って咲いているように
万葉の頃も、日当たりのいい道端に咲いていたのでしょう。


万葉集には、「荊(うまら)」の歌は一首だけですが
これ以降の文学作品には
“イバラ”“ウバラ”“ハナイバラ”と出てくるものは
「ノイバラ」をさしています。


「ノイバラ」は、野原に生えるバラ。
名前の通り野原や河岸に、刺のある枝を分岐させながら
繁茂しています。
花は、一つ一つ小さいものです。
咲いた花の芳しい香りは辺り一面に漂います。


今日の歌は、
千葉県君津郡の出身の防人が詠んだ歌です。


道に咲く「ノイバラ」の枝先に巻きつく豆の枝のように
からまるあなたに別れてゆくのかと
出征する朝の、妻との別れを惜しんでいる様子が
ひしひしと伝わってくるようです。


日本に咲く「ノイバラ」は、白花です。


ヨーロッパでは、シューベルトの“野バラ”が知られていますが
これは別種の野バラで、ピンクの花が咲きます。
この野バラは、ヨーロッパ各地で日本以上に親しまれています。


今、バラ園などは大輪の薔薇が咲き誇っています。
そういった園芸種のバラの台木になるのは「ノイバラ」です。
華麗なバラの花を咲かせる原動力ともなっているのです。


子どもの頃、藪に入って遊んでいる時に、
つい、繁茂したノイバラの藪に入ってしまい
スカートは破ける、刺にさされる
怒られたり、痛かったり、踏んだり蹴ったりの
今となっては、懐かしい思い出が
この花を見るたびに、よみがえってきます。


 


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


   
   散歩道 葉影に白き 花いばら 
 


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| 初夏 | 17:07 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
「ゆきのした(虎耳草)」は二枚舌
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 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  真白くも  小さき蝶の  形して
  
   夏きたるとて   雪のした咲く
(窪田 空穂)


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ちょっと湿った所にはえている「ゆきのした(虎耳草)」
緑の季節が深まった頃に
うっすらと白い毛に包まれた葉の間から花茎が伸びてきます。


花茎がすくすく伸びて、五弁の白い花を咲かせます。
五弁の花は、上部が三弁で短く
下部の二弁は、長く左右に垂れさがります。

舌に見える、ゆきのした

長く垂れさがっている二弁を見ると左右対称ではありません。
山野草の大文字草などは、花弁は左右対称なのに
「ゆきのした(虎耳草)」は、どちらかが長く対称にはなっていません。


この二弁を“舌”に見立てて
「ゆきのした(雪の舌)」という説は、中村浩氏が書かれています。


ただ、この二弁の舌は“二枚舌”につながることから
“二枚舌”は嘘つきということで、
忌み嫌われている処から
「ゆきのした(雪の舌)」と呼ばれなかったのかとも書かれています。


一般的には
牧野富太郎博士の
常緑の葉をつけていることから
雪の降る冬には、雪の下になっても枯れないところから
「ゆきのした(雪の下)」という説になっています。


中国からの渡来の歴史は古く、原産地の中国では
垂れさがった二枚の花弁を虎の耳に見立てて
“虎耳草”と言われていたそうです。


クローン植物といえるもので、種子を作らず
赤く細い茎を長く延ばしていき
その先に子どもを作りながら増えていきます。

若い葉に産毛のように白くなっている葉。
この生の葉のしぼり汁は、子供のひきつけや、やけど、虫さされの
治療に使われていました。
木陰に咲く虎耳草

花が咲き始める頃の若い葉のてんぷらなども美味しいものです。

庭に植えると驚くほど増える「ゆきのした(虎耳草)」

今回の歌は、
春の花が終わり新緑が濃くなる頃に
地面を這うように咲く、
白い「ゆきのした(虎耳草)」を詠っています。

「ゆきのした(虎耳草)」が咲きだすと
夏前の梅雨がやってきます。


━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


   
   葉陰より 赤き蔓だし 虎耳草 
 


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| 初夏 | 00:18 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |


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