野花や草木の散歩道で一句

道端の野花、そして草や木。
どこにでも咲いている道端の可憐なお花。
古の歌から生い立ちを辿り、草木たちの古を思い浮かべながら
草花や木々を眺めてみませんか。
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春一番に咲く、こぶし
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  うちたえて 手をにぎる こぶしの木


   心せはさを なげく比かな (夫木集)


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「こぶし(辛夷)」の、
ビロード状の細かな毛にしっかり包まれた
筆の穂先のような蕾が開き始めました。

蕾を開くこぶし

「春」の掛詞として「木の芽張る」という言葉があります。
この“張る”が「春」を連想させます。


木の芽が一番に膨らんで
大木が未だ眠っている時に
寒さに耐えてじっと春の到来を待っていました。
早く白い花を咲かせる「こぶし(辛夷)」。


日本のいたるところにある、日本特産の木です。


植物進化を考えると
白色六弁の花が、原始的な要素を保っていることから
ずっと昔から日本の春を彩っていたようです。


天武天皇の時代(631年〜685年)
大彦の命の子孫の“名代(なだい)”が
珍しい花を献上しました。
その花を見て、天皇は大いに喜んで
花の名を問うたが、誰も答えられません。
この時、唯一人、名代が
「これこそ辛夷(しい)と呼ぶ花にて候」と奏上しました。
天皇はお喜びになり
名代に「阿部の志斐連(しひのむらじ)」の名前を給われたと
“姓氏録”に記されています。


六弁の花の開くさまが、子供のこぶしの様だといわれ
「こぶし(辛夷)」とされて、
今に至っているようです。



春を迎え、農家では
春一番に「こぶし(辛夷)」の花が咲くと
苗代作りなどを始めました。


「コブシの蕾が沢山つくと豊作」、
「下向きに咲くと凶作」などと花のつけ方や花の数で、
今年の天候や収穫を占ったりしていました。
どこにでもある「こぶし(辛夷)」の木は
生活に密着した植物の一つです。


今回の歌は、
かたいつぼみのこぶしの花が咲きだすと
なにかと忙しくなってくると、詠っています。
春、暖かくなるとなにかと忙しくなります。


今年の「こぶし(辛夷)」は、
蕾を沢山つけていますが、どのように咲くのでしょうか。
いまやっと、蕾が開花し始めたところです。


沢山花が咲いて
豊作の年になるようにと、祈るばかりです。



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  春さむき こわごわ開く 白こぶし


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| 初春 | 17:31 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
しだくさは、耐え忍ぶしのぶ草
JUGEMテーマ:野花と草木を詠う

 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  我がやどの 軒にしだ草 生いたれど


   恋忘草  見るに未だ生ひず (万葉集)


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冬枯れのこの時期
長い緑の葉が揺れています。


万葉集で詠まれている、「しだくさ(子太草)」。
木の樹皮の上や岩の間に、根茎上に並んで生えます。


昔の古びたわらぶき屋根などに生えていたり
樹皮や岩等に着生するシダ植物です。

木肌に着くしのぶくさ

シダの葉が、みな下にしだれるところから
「しだくさ(子太草)」と呼ばれました。
軒に生えるのものを“軒の子太草”として詠まれています。


寒い冬になっても、いつまでも青いので
枕草子の中では“いつまで草”と呼ばれていました。


平安時代になると
「しだくさ(子太草)」は使われなくなります。


何時でも常緑で、
葉先を垂れて長く這って育っている姿に
水がなくなっても耐え忍ぶ草という事で
“忍ぶ”を思わせたのでしょう。


“しのぶくさ”と呼ばれるようになります。
古い藁屋根の家などの軒に生えるものは“のきしきぶ”。


子供の頃、
“のきしきぶ”が垂れている家を見た記憶があります。
寂しそうな情景でした。


人目を引く花も咲かない「しだくさ(子太草)」。
侘しい風情を思い浮かべてしまいます。


今回の歌も
家の軒には、「しだくさ(子太草)」が
忍べ忍べと茂るのに
恋を忘れる忘れ草の花は
いまだに生えてこないと詠んでいます。


 



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  凍て返る 木肌に垂れる 忍ぶ草


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| 初春 | 01:04 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
早春の梅香
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 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  大空に  梅のにほひに 霞つつ


   曇りもはてぬ  春の夜の月(新古今集)


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新春から厳しい寒さでした。
その寒さの中
今年は「梅(うめ)」の開花が早いようでした。

開花した梅の花

いつもの年では、
立春頃に開花する「梅(うめ)」の花です。


寒風の中に
しばらく忘れていた花の香りを漂わせています。


蕾が一つずつほころび始めると。
いつまでも続く寒さの中にも
春の訪れを感じます。


春を真っ先に知らせる「梅(うめ)」の花。
古来から、春を待ちわびる人々に
季節の到来を告げる花でした。


奈良時代以前に中国から渡来した「梅(うめ)」。


万葉の頃になると、
「梅(うめ)」は寺や神社などに植えられます。
そして、身分の高い文化人などが
その花に異国情緒を感じながら
観梅などを楽しんでいました。


春を迎える花として
万葉集には、萩に次いで多く詠まれています。

時代が下って、平安時代になると
一般にも普及してきます。
屋敷の庭に植えられ、
早春の花として愛でられるようになります。


この頃までは
春、花といえば「梅(うめ)」だったようです。


そして、一般の人達も楽しむ様になる平安時代になると
「梅(うめ)」の花だけではなく
香りも楽しむ様になるようです。

白梅と紅梅の香りを

気品漂う梅の香りが好まれて
古今集や新古今集などには
梅の香りを詠んだ歌が、多く見られるようになります。


今回の歌も
梅の香りのために、大空も霞んでいます。
曇ってもいない空に
春の夜のおぼろ月夜が出ている情景を詠っています。


梅の開花と共に
春の足音が大きくなってくるようです。



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  ひだまりの  白梅の花  鳥遊び


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| 初春 | 00:58 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
寒さの中の松の緑
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 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



  老いぬとて 松は緑ぞ まさりける



   わが黒髪の  雪の寒さに (新古今集)



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「松(まつ)」は、
美しい日本の情景を作っています。
この寒さにも緑を失わずに
古木になる程、風格が備わってきます。

緑増す松

古来から、百木の長として
神を呼ぶ、神への依り代に選ばれています。



その為、
新春の松飾りから始まり
年末にいたるまで
需要の多い木の「松(まつ)」



古来から、長寿を不老を象徴するものとされてきました。
民衆の芸として言われる猿楽から発展した“能”



そこで使われる謡曲は、
植物を擬人化して、
その植物の精を登場させるものも多くあります。
この謡曲の中で使われるものにも
「松(まつ)」が多く使われています。



その中の“老松”のなかでは
秦の始皇帝が、泰山で小松の陰で雨宿りをしたところ
この松、
にわかに大木になり、
雨がかからぬように枝を垂れ葉を並べたので
始皇帝はこの松に“五大夫”「史記」にある故事。
「松(まつ)」の別称となっています。
その“老松”が能舞台にも描かれています。

風に揺れる松の枝

今回の歌は、
だんだん雪のように白くなってい
季節は、雪が降って寒いのに
老いていく松は、緑が優っていくと詠っています。



自分の気持ちを現わしているような歌です。



霜枯れのこの時期に
松の緑が一層濃くみえます。



 



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



   朝まだき 寒の風吹き 松緑



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| 初春 | 18:07 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
冬咲く枇杷の花はバラ科
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 ━━━ 今日の歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



   枇杷の花 さきそめて 日のあきらけき



   今日は折をり     蜂がまつはる (佐藤佐太郎)



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北風の中の寒い中で、
まるで外套をまとって咲いている花が「枇杷(びわ)」の花。
果樹の花がこんな寒い時期に咲くのも面白いです。

花びら揺れる枇杷の花

梅雨が始まる頃に橙色の果実になります。



漢名の「枇杷(びわ)」。
実が、楽器の“びわ”に似ているところからついたとされています。



子供の頃よく聞かされていたのは
“枇杷の木が植えてある家は、病人が絶えない…”と。



この「枇杷(びわ)」は、
食べた時、種をそのまま地面に捨てておくと
すぐに芽が出て
大きくなるのも早い。
少し、大きくなると必ず抜かれていたものです。



子供の頃は
沢山の実がついた大きな木を見ると、
病人と橙色の実がどうしてなのだろうと
不思議な思いで見あげていました。



中国でも、焼き肉などと一緒に食べると
病気になると言われていたようです。



この時期に咲く花と大きくて分厚い葉が多い木です。
その為一年中常緑の葉の為に
陽が射さないことからの迷信だとされています。



中国では漢の時代から、「枇杷(びわ)」の栽培をしていました。
日本でも、暖かな海岸などに自生していましたが
自生の「枇杷(びわ)」は、果肉も薄く
あまり、利用はされていませんでした。

陽だまりの枇杷の花

今でも、庭木で植えてある木になる実は小さいです。
栽培されたものと比べると本当に小さい。
食べるのも大変ですが
熟した実は、美味しいですね。



「枇杷(びわ)」の栽培が盛んになったのは明治に入ってからです。
それにつれてでしょうか、
民間療法での、びわの葉健康法が多く聞かれるようになります。
今では、常緑のびわの葉は、
煎じて飲まれたり、あせもを治すのにと使われています。



この時期に咲く「枇杷(びわ)」の花は
5枚の花びらを持つバラ科です。



この寒い時期に
陽射しの薄い中で
毛羽立った厚い外套の中から顔を出す花は可愛いものです。



今回の歌は、
「枇杷(びわ)」の花に飛ぶ蜂
冬の日だまりを思わせる情景です。



 



━━━ 今日の詠み歌 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



   寒の朝  肩寄せ縮む  枇杷の花



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| 初春 | 17:27 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |


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